今から始めるドミニオン 初心者講座

 最近ニコ生で初心者枠が多く、見たり対戦してもどかしかったのでまとめてみた。
 1と2、2と3の間に大きな差があるので、1が出来るようになってから2を、2が出来るようになってから3を読むことを強く推奨します。


1.誰もが陥る罠

 ドミニオンを始めたばかりのほとんどのプレイヤーが陥る罠として、アクションカードを使う事が目的になってしまう事があります。
 例を挙げると…


村と鍛冶屋と市場を使ってデッキを掘り進んだけど5金しか出ない → 財宝カードや仮想コインが少なくカードを引いたりアクションを増やす意味がない
村から木こり2枚を使って4金+2購入 → 村と木こりの代わりに銀貨を買っておけば6金で最強カードである金貨を買えた
アクションを4〜5枚入れて毎ターン使った → 手札に2枚以上来ても1枚しか使えず残りは無駄になる


 ドミニオンの目的は勝利点カードを集めることであって、決してアクションカードを使う事ではありません。本来アクションカードは自分が勝利点カードを集めるのに使ったり、他のプレイヤーが勝利点を集めるのを邪魔するのに使うためのものです。


 ちなみになぜ金貨が最強カードなのかというと、ドミニオンは基本的に属州を買うことの多いゲームだからです。
 勝利点カードはゲーム中には無意味なのであまり枚数を入れたくありませんし、序盤から取りたくもありません。ゆえに属州を目指すのが王道となります。
 さて、手札は5枚しかなく、鍛冶屋を使っても7枚です。銅貨だけでは属州を買うことが出来ません。そこで、銀貨や金貨が必要になります。
 例えば、金貨2枚と銀貨1枚だとたった3枚で属州を買うことが出来ます。金貨が1枚なら銀貨2枚と銅貨1枚、合計4枚以上必要です。このように金貨は集めれば集めるほど簡単に属州が買えるようになるゆえに最強カードなのです。


 もう1つやってはいけない行動として、デッキの強さを下げるような弱いカードを取るのもダメです。
 最初の2ターンで大広間や願いの井戸を買う意味は全くありません。デッキの強さの基準の1つに平均生産力があります。これはカード1枚あたりが生む金の量を表したもので、例えば最初の2ターンで銀貨2枚を買った12枚では 銅貨7枚+銀貨2枚=計11金/12枚=0.92 となります。これが銀貨+大広間では9金/11枚=0.82 と下がってしまいます(なぜ12枚でなく11枚かというと、大広間は+1ドローかつ+1アクションがあるので、実質ないものとして扱えるからです)。
 また、+2アクションがなくて+3以上のドローカードがあるときも大広間を取るとデッキが弱くなります。大広間は5枚の手札に入っていれば邪魔になりませんが、鍛冶屋で引いてくると呪いと変わらない無意味なカードになります。この場合3金はどんな時でも使える銀貨を買うのが安定です。


 3〜5金出たときにアクションを入れるかどうかの判断基準の1つは銀貨より強いかどうかです。例えば木こりや宰相は+2金で銀貨と同じですが、1ターンに1枚しか使えないので金を出す目的では銀貨に劣ります。デッキの中にアクションが少なければ問題ありませんし、木こりは庭園の勝利点を伸ばすのに使え、同じ+2金のアクションでも民兵の効果は大きいので、常にアクションより銀貨の方が強いわけではありませんが。


 アクションを使う事が目的のプレイを止め、ドミニオンの目的は勝利点カードを集めることであると理解し実践できればある程度勝負をする事ができるでしょう。
 もちろん勝ちを目指さず、ひたすらアクションを使いまくるのもプレイスタイルとしてはありです。特に陰謀や海辺は凶悪なアタックカードが多いので荒らすだけのプレイでも楽しめます。一緒にプレイしてる人からは嫌われるかもしれませんが。


 次の項は戦略のネタバレになるので、自力で強い戦略を見つけたい人は見ない事をお勧めします。



2.勝利点を取ることを目的にする戦略

 ではどのようにして勝利点カードを集めればいいかというと、まず銀貨と金貨、属州のみを買い続けるお金プレイと呼ばれる戦略の速度を基準にします。
 これは頭を全く使わなくてもできる戦略で、大体17ターン前後で属州を4枚購入できます。なぜ属州4枚が基準となるのかというと、12枚の属州を4人で分けると1人3枚なので、4枚買えれば他のプレイヤーより1歩リードできるからです。
 勝つ事が目的ならば、これより遅い戦略を取る必要はありません。上の項で示したアクションを使う事が目的のプレイは大体お金プレイより遅くなります。
 基準となる速度なので、何度かソリティアして体感しておくとわかりやすいです。


 お金プレイは速度の基準であって、最速の戦略ではありません。主に3つの戦略でこの速度を上回る事ができます。


ステロイド
 ステロイド、略してステロはドミニオンレシピという同人誌で提唱された、生産力が最も高くなるようにカードを購入する戦略です。大抵アクションカードは1〜3枚程度のみで、他は財宝カードを集めます。
 わかりやすく言うならば、お金プレイを適量のアクションカードでブーストする戦略です。例えば完全お金プレイに鍛冶屋を2枚だけ投入する鍛冶屋ステロは15ターンまで加速します。
 8金出たら大体の場合で属州を買って大丈夫です。
 長所は速度で、金貨を1〜2枚買ったらもう属州を買えます。短所は属州や公領を購入することしかできない柔軟性のなさと、アタックカードに対して脆い面があることです。
 ただし仮面舞踏会や保管庫など、ステロに使えるカードの一部はアタックに耐性を持つものもあります。


・コンボ
 コンボデッキは様々なカードを組み合わせる戦略です。
 多くの場合+2アクションのカードと+3以上のドローカードが組み合わせられます。発展系として、デッキ全てを引き切ってしまうことを目的としたコンボデッキは引き切りと呼ばれます。
 村と鍛冶屋、地下貯蔵庫でたくさんカードを引いて8金や16金+1購入を目指したり、祝祭と書庫を組み合わせて仮想コインで8金を狙ったり、様々な形をとります。
 単発のコンボとして、例えば金貨を改築して属州を獲得するというのもあります。
 長所は柔軟性です。様々なアクションを入れられるので、引き切りデッキに改築を入れて、金貨+改築と16金2購入で1ターンに属州3枚なんて事もできます。短所は速度で、場合によってはコンボが完成する頃にはすでにステロが2〜3枚属州を買っていたという事態が起こり得ます。特に基本セットではステロに追いつくのが難しく、現実的な選択肢となるのは祝祭と書庫がある場合や、改築や工房で素早く引き切りデッキを組める場面のみでしょう。
 また難易度が高いのも問題で、うまくコンボデッキを作れるようになるためには練習が必要です。アクションを無駄に増やしすぎてお金プレイより遅くなってしまったら意味がありません。この動画を見て、同じ「最初のゲーム」サプライ(First Playサプライ)で20〜30回くらいソリティアするとコツがつかめると思います。
最初のゲームサプライ:地下貯蔵庫 堀 村 木こり 工房 鍛冶屋 改築 民兵 市場 鉱山


・ビートダウン
 ステロとコンボは基本的に属州を主に据えましたが、ビートダウンは属州以外の勝利点カードを集める速攻戦略です。
 代表的なのが庭園と公爵です。庭園は工房や木こりを使い、早い段階から庭園を取りつつデッキの枚数を増やし3山切れを狙う戦略です。庭園の勝利点はせいぜい3〜4点にしかならないので、長引かせると属州に追いつかれてしまいます。
 公爵は役人や鉄工所でデッキの銀貨の密度を増やし、5金出やすい状態を作りながら公領を集め、公領の奪い合いが終わった後で公爵を取る戦略です。
 長所は速度です。どちらも属州を集めるより速度が出やすいですが、極端にコンボが作りやすかったり、礼拝堂で超スピードが出たりすると負けることもあります。
 短所は難易度です。サプライのカードや被った人数で行動が変わってくるため、経験が必須です。


 これら3つの戦略を上手く運ぶ事ができるようになれば初心者同士の対戦では良い成績を収める事ができるはずです。
 属州4枚を16ターン以内に取る練習をするといいでしょう。同じサプライでステロとコンボ両方を試すと、どんな場合にどっちが速いのかの判断力が身につきます。ビートダウンの場合30〜40点が目安になります。
 サプライによってはこれら以外の選択肢もありえます。例えば、魔女や海賊船、礼拝堂などがある場では通常と全く違った行動をしなければなりません。


 次の項はより発展的な内容なので、ドミニオンは勝利点カードを集める事が目的であると理解し実践できた人のみ見ることを推奨します。


3.中級者になるために

 ドミニオンマルチプレイヤーゲームであり、他人の行動次第で自分の最善手が変わります。ソリティアしていれば勝てるゲームではありません。
 さて、初心者編ではわかりやすくするためにマルチプレイの部分を省いて大嘘をつきました。ソロプレイでは必要なくてもマルチプレイを意識するならば必要な知識が多いので、1つずつ解説していきます。


・金貨は最強カード
 金貨が最強カードとなるサプライはそれなりに多いですが、常に最強なわけではありません。というよりも、ドミニオンはゲームのシステム上最強カードが決められません。
 海賊船に向かうプレイヤーが2人以上いた場合は金貨が活躍できるのは終盤のみです。コンボデッキなら祝祭や共謀者で仮想コイン中心にした方が回りやすいですが、他のプレイヤーと奪い合いになるなら金貨も入れる必要があります。
 いずれにせよ、どうやって8金や16金を出すのかを考える必要があります。


ドミニオンは勝利点を集めるゲームである
 これは正しくありません。ドミニオンは他のプレイヤーよりたくさん勝利点を集めた状態でゲームを終了させる事が目的のゲームです。
 最初のうちは他のプレイヤーが取った属州の枚数を数える余裕がないため、特に意識する必要はありません。定石を覚え自分の行動を長考せず出来るようになって初めてほかのプレイヤーの属州の枚数を覚える事が可能になるでしょう(つまりドミニオンは長考すると重要な非公開情報を忘れてしまうので返って弱くなるゲームです。記憶力がいい人には当てはまりませんが)。
 ソリティアならば属州4枚が基準となりますが、マルチプレイでは属州4枚取っても勝てない事があります。例えば、単純に属州3枚と公領2枚、屋敷1枚取ったプレイヤーに負けます。誰かが失速して属州を取れない場合やアクションを使うことを目的にしている場合、取るべき属州の閾値は5枚に上がります。この場合いつも通りプレイして4枚で止まらないための戦略の修正が必要になりますが、周りを見ていなければ判断できません。
 ゲームを終わらせるタイミングもマルチプレイゆえです。デッキを育てようと3人で強いカードを集めていたら、先行したプレイヤーが3山切れさせることはたまにあります。圧縮がない場の魔女は8金に到達するのを困難にしますが、公領を買うタイミングは早すぎると身動きが取れなくなり、遅すぎると数を取れません。



・お金プレイより遅い戦略を取る必要はない
 ロックデッキを組む場合これは当てはまりません。自分が遅くなっても、他のプレイヤーをそれ以上に遅らせれば勝てるという考えです。
 魔女や妖婆の撃ちあいになれば当然お金プレイより遅くなり、大体公領の買いあいから3山切れになります。拷問人を毎ターン3回以上撃ち続ければ他のプレイヤーは大きく遅れます。毎ターン議事堂などで引ききった後に幽霊船を撃っても他のプレイヤーはなかなかデッキを進める事ができなくなります。



 このように、最初は意識する必要のなかったマルチプレイという要素は上達するにつれ意識する必要が出てきます。
 マルチプレイを意識し実践できるようになれば中級者です。しかし、そのためにはカードや戦略に関する知識、他のプレイヤーの行動を確認する余裕、状況判断のための経験など様々な要素が必要です。相当な数の実戦と考察を重ねなければ身につける事ができないでしょう。ちなみに筆者は200戦以上やってようやく他のプレイヤーを意識できるようになりました。
 もし2桁の試合数で中級者になれたら、あなたは才能あるドミニオンプレイヤーです。