ステロイドの生産力考察

 ステロイドドミニオンレシピで提唱された、最も生産力を高めるようにカードを買う戦略のことである。大抵の場合アクションカードは2枚のみとなる。


 まず、ステロイド戦略の基本である鍛冶屋ステロについて検証する。

ターン数 金手札 購入 手札 金総量 デッキ枚数 平均生産力 鍛冶屋引く確率 被る確率 平均手札数 手札期待値
1 4 鍛冶屋 銅4 7 10 0.7 0.45 0 5.91 4.14
2 3 銀貨 銅3 9 11 0.82 0.42 0 5.83 4.77
3 6 金貨 鍛冶屋 銅4銀1 12 12 1 0.38 0 5.77 5.77
4 4 鍛冶屋 銅4 12 12 1 0.6 0.54 5.88 5.88
5 8 属州 鍛冶屋 銅3銀1金1 12 13 0.92 0.57 0.5 5.86 5.41
6 6 金貨 銅3金1 15 14 1.07 0.54 0.47 5.83 6.25
7 4 銀貨 銅2銀1 17 15 1.13 0.51 0.44 5.8 6.58
8 10 属州 鍛冶屋2 銅2銀1金2 17 16 1.06 0.49 0.41 5.78 6.14
9 3 銀貨 銅3 19 17 1.12 0.47 0.39 5.75 6.43
10 6 金貨 銅2銀2 22 18 1.22 0.45 0.37 5.73 7
11 10 属州 銅2銀1金2 22 19 1.16 0.43 0.35 5.71 6.61
12 3 銀貨 銅3 24 20 1.2 0.41 0.33 5.69 6.82
13 3 屋敷 鍛冶屋2 銅1銀1 24 21 1.14 0.4 0.32 5.66 6.47
14 6 公領 銅3金1 24 22 1.09 0.38 0.3 5.65 6.16
15 11 属州 銅1銀2金2 24 23 1.04 0.37 0.29 5.63 5.87

表1 鍛冶屋ステロ 鍛冶屋2枚の場合


 シャッフルタイミングは複雑なので考慮していない。デッキ枚数は鍛冶屋を考慮せず、被った場合に手札6枚として計算してある。
 金貨や銀貨を買う毎に生産力が増え、勝利点を買うたびに減るのがわかる。銀貨は0.05〜程度生産力を上げ、金貨はその2倍ほどの効果がある。勝利点は銀貨での増加量と同程度生産力を下げる。
 初手銀貨+銀貨スタートでは生産力0.92、手札期待値4.58で鍛冶屋+銀貨の方が優れている。
 4ターン目に鍛冶屋でなく銀貨を買うと、手札期待値は5.88→6.15と変化する。この時点では鍛冶屋より銀貨の方が高い生産力を得られる。
 7ターン目に銀貨でなく3枚目の鍛冶屋を買うと、手札期待値は6.58→6.17と下がった。この先3枚目で期待値が上がる可能性はあるが、終盤は勝利点を買わないといけない事を考えると、鍛冶屋ステロの鍛冶屋の適量は2枚以下である。


 上の例では2枚目の鍛冶屋を入れるのが早すぎたので、適切なタイミングを検証する。
 もし4ターン目に鍛冶屋を買わず銀貨を買い、他は同様に進んだ場合の7ターン目の手札期待値は銀貨購入で6.64、鍛冶屋購入で6.58。この時点でもまだ銀貨の方が期待値が高い。
 次の表は鍛冶屋1枚で上手く回った例である。

ターン数 金手札 購入 手札 金総量 デッキ枚数 平均生産力 鍛冶屋引く確率 被る確率 平均手札数 手札期待値
1 4 鍛冶屋 銅4 7 10 0.7 0.45 0 5.91 4.14
2 3 銀貨 銅3 9 11 0.82 0.42 0 5.83 4.77
3 6 金貨 鍛冶屋 銅6 12 12 1 0.38 0 5.77 5.77
4 6 金貨 鍛冶屋 銅4銀1 15 13 1.15 0.36 0 5.71 6.59
5 6 金貨 銅3金1 18 14 1.29 0.33 0 5.67 7.29
6 7 金貨 銅4金1 21 15 1.4 0.31 0 5.63 7.88
7 8 属州 鍛冶屋 銅3銀1金1 21 16 1.31 0.29 0 5.59 7.33
8 4 銀貨 銅1金1 23 17 1.35 0.28 0 5.56 7.52
9 10 属州 鍛冶屋 銅4金2 23 18 1.28 0.26 0 5.53 7.06
10 8 属州 銅3銀1金1 23 19 1.21 0.25 0 5.5 6.66
11 9 属州 銅1銀1金2 23 20 1.15 0.24 0 5.48 6.3
12 6 公領 鍛冶屋 銅3金1 23 21 1.1 0.23 0 5.45 5.97
13 9 属州 銅1銀1金2 23 22 1.05 0.22 0 5.43 5.68

表2 鍛冶屋ステロ 鍛冶屋1枚で上手く回った場合

 8ターン目で銀貨の代わりに鍛冶屋を購入すると、手札期待値は7.52→7.85と大幅に上がった。これはターン数よりも生産力が高いことによる影響が大きい。
 つまり、生産力に応じて2枚目の鍛冶屋を入れるタイミングを計る必要がある。早く上がったなら早い段階で入れてもよく、金貨が中々取れなければある程度銀貨を入れてからの方が良いが、タイミングが難しい。いずれにせよ4ターン目に追加するのは早すぎで、デッキ4〜5周目に追加するのが適切である。
 ちなみに、ここまでたくさん金貨を集めても生産力が1.5を超えることがない。これは金貨に比べ+2ドローがいかに弱いかを表している。


 次に、中庭ステロの生産力は次のように変移する。

ターン数 金手札 購入 手札 中庭戻す 金総量 デッキ枚数 平均生産力 中庭引く確率 手札期待値 銀貨→中庭期待値
1 4 中庭 銅4 7 10 0.7 0.45 3.82
2 3 銀貨 銅3 9 11 0.82 0.42 4.43 4.01
3 3 銀貨 銅3 11 12 0.92 0.38 4.94 4.58
4 8→6 金貨 中庭 銅4銀2 銀貨 14 13 1.08 0.36 5.77
5 4 中庭 銅2銀1 14 13 1.08 0.57 6
6 3 銀貨 中庭2 銅3 中庭 16 14 1.14 0.54 6.33 5.89
7 11→8 属州 中庭 銅4銀2金1 金貨 16 15 1.07 0.51 5.88
8 9 属州 銅2銀2金1 16 16 1 0.49 5.49
9 3 銀貨 中庭 銅3 屋敷 18 17 1.06 0.47 5.79 5.44
10 5→3 銀貨 中庭銅3銀1 銀貨 20 18 1.11 0.45 6.05 5.75
11 8 属州 銅1銀2金1 20 19 1.05 0.43 5.71
12 8 属州 中庭 銅4銀2 属州 20 20 1 0.41 5.41

表3 中庭ステロの例


 銀貨→中庭期待値は銀貨の代わりに中庭を買ったときの手札の期待値。
 平均生産力は最大でも1.14で、ここまで上手く回っても1を下回ることはない。もちろんこの後公領を買い始めると1を切るだろうが。
 中庭はデッキ枚数に含まず、被った場合に実質5枚として期待値を出している。
 ちなみに、4ターンまでの金貨購入確率は中庭+銀貨が66.16%、中庭+中庭が35.10%で中庭+銀貨の方が大幅に優れている。


 鍛冶屋と同様に中庭も2枚以下でよい。
 ちなみに5ターン目に中庭でなく銀貨を買うと手札期待値は6.1と0.1だけ上がる。もう少し先で2枚目の中庭を買うと銀貨より期待値が上がることもあるだろうが、生産力が上がると購入機会が減るのでこのあたりで買ってかまわない。
 ステロに使うアクションカードのドロー数が少なければ早めに2枚目を買って良く、多いほど遅めに追加する必要がある。


 即2枚目を買うと遅くなっても、数ターン経過してから買うと速くなる可能性があることが今回の結果で明らかになった。現在投入枚数は統計が取られているが、ベストとなるタイミングも調査する必要がある。





 さて、上級者の中には中庭ステロに向かうときの初手に中庭+中庭を選ぶ人が多い。上で説明したように、これは効率的には完全な悪手である。何らかの駆け引きのためこの選択肢を取っていると思われる。
 中庭は実質+2ドローなのでコンボを回すためには使えない。もし中庭ステロにいくことの表明なら中庭+銀貨で十分示せるし、示す必要がない(中庭がコンボに使えない事を知らない)相手なら最速手を選べばまず勝てるはずである。つまりこれは戦略を明確にしてプレッシャーをかける目的ではない。
 また、中庭は2枚が最適な数である。なので寵臣や漁村など集めれば強いが全員が取りにいくカードのように急いで取る必要はない。
 現状においてこの理由は不明である。恐らくこれがわかればドミニオンの新たな駆け引きの1面が見えるのだろう。
 ちなみに筆者と上級者の間には超えることのできない非常に大きな実力差があり、勝つどころかいい勝負に持ち込むことすら難しいことを明記しておく。


 追記:中庭+中庭は3〜4ターンに中庭を引く確率を上げたりデッキの回転率を上げたりする、生産力以外の理にかなった効果があるから選ばれているらしい。