ゲームとアニメは文化として全然別物なのだな、という話

「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る
 アニメの監督の名前を3人くらいしか挙げられないアニメに疎い人間の意見としてゲームとの差異を羅列してみた。
 今までアニメとゲームはわりと似たような文化だと思ってたからかなり意外。ゲームが↑の方向へ行ってしまうと市場が数年で潰れるんじゃないかな。




>作品はコンテンツがないと作品にならない
 保守派エロゲーマーはむしろ内容のないゲームを好む。水夏D.C.を比べて濃いのは水夏だが、人気があるのは空っぽのD.C.
 中身がないのと面白さや売り上げとは無関係。ただキャラの魅力を書いただけでストーリーが何もないゲームでも面白いものはあるし、売れている。悪夢はストーリーやゲーム性は非常に薄いが、間違いなくゲーム史に名を残す傑作の1つ。実際市場が成熟してない当時としては珍しく10万本以上売れたらしい。



>コンテンツマーケットの会場にはCGを使った作品が多いが、同じソフト使ってたら独自の物は作れるわけないと思う
 コンシューマやここ10年くらいのアーケードは1つのハードを何年も使い続ける。開発ツールも共通。DCやPS2、NAOMIの頃からミドルウェアが発達してきて、いくつもの会社が開発効率や費用からそれを採用してる。制作環境や動作される場がほとんど同じであっても、出来上がった結果は会社やディレクターによって千差万別。同じNAOMIでもカオスフィールド式神2では操作した感覚が全く違う(入力遅延がもっとも顕著なのがアレだが)。ファミコンという表現できる幅の小さい1つのハードにおいて、スーパーマリオアイスクライマーロックマンはそれぞれの手触りが全く違うにもかかわらず、どれも素晴らしいデザインになっている。
 多分これがアニメとゲームの一番大きな違い。



>1万人の中で1等賞になるのは大変。1等賞ならこうやって(私のように)生き延びられますが、みなさんがたは基本的に生き延びられないところで仕事している。
 商業ゲームの目的は利益を出すことであり、利益を出すためには1等賞を目指さなくてもいい。そのためのモデルはいくつもある。大作を大金を賭けて開発して大量に売ってもいいし、マニア向けに開発費を抑えて1万本程度売ってもいい。今までのパッケージのほか、最近はDL販売も利益を上げられるようになってきた。
 また、ゲームの発展には多様性が必要。大作とニッチ・ライトユーザ向けとヘビーゲーマー向けなどいろんなゲームがあることで多くのユーザを満足させられる。テイルズのようにDLCでレベルを買える気軽に遊べるRPGがあってもいいし、世界樹のようなひたすらダンジョンに潜る面白さを追求したストイックなRPGも遊びたい人がいる。今のSTGにとって高みを目指すCAVEの弾幕STGは絶対必要なものだが、G.revやMOSS、同人が創りたいSTGを創ることで裾野を広げるのもまた必要。メルブラEFZみたいなマニアのためのコンボゲーはジャンルを存続させるし、ストIVアカツキみたいなとっつきやすい格ゲーは人口を増やす。
 全てのゲームが1位を目指すことはゲーム全体にとって大きなマイナスとなる。



>高校卒業以降の技術論で手に入れた物は時代に振り回されます。時代の技術論に振り回されるところがあって、オリジナルなところに行けない。
 60年代の黎明期から90年代にかけてゲームは技術の進化と常に共にあった。新たな技術が開発されるたびに、それを上手く利用したゲームが生み出された。進化の緩やかになった今でもDL販売や一昔前は不可能と思われてた動的ゲームのネット対戦など新たな技術がゲームに取り込まれてる。
 一方でDSやWiiのように古い技術を上手く取り入れるという手法も有効だが。



>自分はとても独自なことをやってるつもりでもほとんどコピー、まねのレベル。そこから抜け出すために……プロクリエイターになるにはどうするか。
 ゲームは模倣を繰り返す中で成長してきた文化。むしろプロなら変化をユーザに受け入れられる範囲に抑える必要がある。革新的なゲームはむしろマニア向けのもの。ゼビウススクランブルやミッションXを踏襲したゲームだし、RPGドラクエになって日本でヒットするまでにはD&Dから模倣によって進化してきた歴史がある。ストIIが出来るまでには特にベルトスクロールみたいなアクションが必要だった。まさに「少しずつ強くなる、それがいいんだ」



>SF好きが作ったSF映画はつまらない
 今年WiiとDSでそれぞれ最速ミリオン記録を塗り替えたスマブラポケモンは創作者がゲームが好きで好きで研究した結果創り出されたゲーム。面白いゲームを創るにはゲームのことを詳しく知っている必要がある、という考え方。田尻さんはなぜゲームが面白いのか分解して考えたし、桜井さんはたくさんのゲームをやりこむ方法でそれを行った。
 もちろんゲーム畑以外の人がゲームを創ってヒットさせる例はあるが少数。マザーガンフロメタブラ塊魂、あと何あったっけ。



>きれいな絵、きれいなねーちゃん、きれいなヌード……きれいなもの、ぱっと見れば見た瞬間は気持ちいいです。が、2回見ますか? 不思議と2回、3回見ていいものは、きれいなだけのものでは絶対にないんですよ。
 萌え絵は気持ちいいものをひたすら追求して生み出された絵柄。当然それが多くのユーザに支持され続けているから研究されてきた。原画だけではなく塗りにも言える。90年代のグラフィック至上主義もそれ以後のゲームのクオリティの向上や新たな方向性の発明(弾がたくさん描画できるようになった→じゃあ真アキだ、等)に貢献している。今簡単に綺麗な絵やたくさんのオブジェクトを描画できるのは当時から続く進化があっての事。
 ゲームではユーザが1つの絵を長時間見ることを要求される。絵描きでない人間が1つの絵を長時間見続ける状況はゲームでしかありえない。ゲームに使う絵は綺麗なだけでもすぐ飽きることはないか、あるいは飽きても他が補うのでかまわない。